動物における食欲と健康

本ページはプロモーションが含まれています
本ページはプロモーションが含まれています
何を食べますか?

さて、早速ですがみなさん、普段食べているものにたいして
どれくらいのことを意識して食べていますでしょうか?

こんな言葉を聞いたことはないでしょうか?
『我々の身体は食べたもので出来ている』

今回は「食」にまつわる色々と、知られざる「食欲」について深掘りしていきたいと思います。
最後までお読み頂くと食生活を考え直さざるを得なくなってしまうかもしれません。
その結果、世界中で増え続ける「肥満」に対する対策の答えが見つかるかもしれません。

今回は著書『新版・科学者たちが語る食欲 食欲人 EAT LIKE THE ANIMALS
(デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン著)より一部抜粋させて頂きながらご紹介させて頂きます。

著者は語ります。
「古くから蔓延し、いまだに収束の兆しのないパンデミック
貧弱な食事と肥満、代謝性疾患の連鎖をどうしたら防げるのだろう?」

この本の著者の2人の昆虫学者と大勢の共同研究者たちの研究を通して
自然界の最古の謎のひとつ
「生物は何を食べるべきかをどうやって知るのだろう?」を解明へと導いてくれます。

動物と食

完璧な栄養状態のステラ

研究員は標準的な研究手法に従い調査対象者であるステラを朝から晩まで観察し
ステラの食事を30日間連続で追跡・記録し続けました。

ステラの行動は興味深いものでした。

ステラの食事は驚くほど多様で、30日間で食べた食品は90種類以上近くにも上りました。

毎日、自然食品と加工食品を様々な組み合わせで食べていました。
ステラには食に関するポリシーはなく、その時々に食べたいものを食べているように見えたそうです。

栄養研究所から上がってきたデータも、それを示しており、ステラの食事に占める脂肪と炭水化物の割合は日によって大きく変動していました。

ところが、その後、研究員はある発見をするのです。

ステラの毎日の食事は
食事のバランスを測るとても重要な尺度である、食事中のタンパク質/脂肪/炭水化物比は30日間ずっと変わらず「タンパク質を1に対し、脂肪と炭水化物が5」というステラの体格の健康的な女性に最適な栄養バランスだったのです。

ステラはコンピュータープログラムを駆使したわけでもなく栄養学の専門家でもない。
実はステラは人間ではなく、ヒヒだったのです

タンパク質のためなら共食いもいとわない

昨今、昆虫食の食材として話題に上る事の増えた子コオロギですが、モルモンコオロギという種をご存知でしょうか?

アメリカ南西部に生息する飛べない大型の昆虫のモルモンコオロギ。
何キロにも続く群れで大行進をすることが知られています。

この大行進で現地の初の収穫に壊滅的ダメージを与え、人々を飢え死にさせかけたそうです。

研究員の追跡調査によると
モルモンコオロギの大群の大行進は毎日2kmも北上していた。

これほどの数のコオロギがなぜ行進していたのか?

コオロギの一群が幹線道路を横断する様子を5日間続けて記録した結果を以下に。

コオロギが車に轢かれると、その真後ろにいるコオロギが立ち止まって死骸を食べた。そして車に轢かれた。
 まもなく、くるぶしが埋まるほどの死骸が積み上がり、油でギトギトした液体を片付けるために除雪機を手配しなくてはならなくなったほどだ。

引用:新版・科学者たちが語る食欲 食欲人 EAT LIKE THE ANIMALS

なぜ草食性の昆虫のコオロギが集団自殺に至るまで共食いをしたんでしょう・・・??
周囲には豊かな植生があり食べ物はほかにたくさんあったのに。
研究員たちは、このコオロギの大行進の前に乾燥した粉末状の餌を置いてみたところ、高炭水化物の餌には目もくれず、タンパク質を含む餌にだけ食いついたのです。

行進を駆り立てていたのは単純な原理だったんです。
後ろの仲間が前進しているのに自分だけ前に進まなければ、食われてしまうから。
一方、目の前の仲間が立ち止まれば、もちろん捕らえて食べることができる。
モルモンコオロギの共食いを駆り立てていたのは、タンパク質に対する強烈な食欲でした。

粘菌

粘菌「モジホコリ」を使っての実験

タンパク質だけ、炭水化物だけ、またばタンパク質と炭水化物の異なる割合の11種類のゼリー状の餌と粘菌を置いたペトリ皿を数百枚用意して段ボールに入れて一晩放置した。

結果、タンパク質と炭水化物の両方を餌を与えられると両方の栄養素に菌糸を伸ばしそれぞれの栄養素ブロックにちょうど届く長さになったところで、それらの混合物を取り込み
採取された混合物のタンパク質と炭水化物の割合は、どの皿の場合もぴったり2:1だった。

さらに、信じれらな事に、粘菌は11種類の餌が並ぶ皿に置かれると
タンパク質:炭水化物が2:1の混合物にだけ菌糸を伸ばしていきコロニーを形成し
他の混合物は無視した
んです。

この実験に使用した粘菌は珍しいものでもなんでもなく
世界中の林床の朽ち木や落ち葉、土壌の中でひっそりとくらしています・・・。

バッタ

※画像は実際に使用したバッタではなくイメージです。

研究員たちは実験室で草食性の昆虫が摂取する2大栄養素である、タンパク質と炭水化物の比率の違う25種類の餌を作成しました。

  • 高タンパク質/低炭水化物(人間で言えば肉に相当)
  • 高炭水化物/低タンパク質(人間で言えば米に相当)

以上のふたつを様々な比率で25種類を用意。
これらの餌は成分こそ違えど、外見は見分けがつかなかった。
昆虫たちの好む、市販のケーキミックスに似た乾燥した粉末状ものだ。

それぞれのバッタは与えられた1種類の混合物だけを、脱皮して成虫になるまで好きなだけ食べられる。
その期間は餌の種類によって異なり、最短9日間~最長3週間まででした。

気の遠くなるような緻密で繊細な作業を200匹のすべてのバッタ1匹ずつに行い、
脱皮して成虫になるか、その前に死ぬか・・・の期間、繰り返した。

気の遠くなるような実験の結果いろいろなことが解ったが注目すべき点は

まず、この研究結果をグラフにしたことでわかった事は
バッタの成長と生存に最も適したタンパク質と炭水化物の比率、つまり最も健康的な栄養バランスが特定できました。
これを摂取ターゲットと呼ぶことにしました。

引用:Lifelong challenge 生涯挑戦

上のグラフで理想的なタンパク質である約200mgを摂取したグループについては点が上にいくにつれて炭水化物を過剰摂取していることになります。

また、グラフの最高の餌である二重丸よりも点が右側へいくにつれて
炭水化物を過少接種している
ことをあらわしています。

炭水化物過剰摂取のふたつの代償

炭水化物を過剰摂取したバッタはふたつの代償を支払うことになりました。

時間

第一の代償が時間。
低タンパク質/高炭水化物の餌で飼育されたバッタは羽の生えた成虫に脱皮するまでの時間がかかった。

成虫になるまでの時間が長くなれなるほど繁殖のチャンスを得る前に鳥やトカゲ、クモに捕食されるリスクが高ります。

肥満

第二の代償が肥満です。
普通の昆虫には全く関係のない事だと思われていたことですが、高炭水化物の餌で飼育されたバッタは肥満になってしまいました。

炭水化物過少接種によるエネルギー不足の代償

高タンパク質な餌で飼育されたバッタは、タンパク質の摂取ターゲット(約200mg)を達成し
炭水化物の摂取量は理想の栄養バランスよりかは少なく摂取。

その結果、最適な餌で飼育されたバッタに比べ、痩せすぎていて成虫になるまで生き延びられる可能性が低かった。
貯蔵脂肪が少ないため長距離を飛行したり、野生で長く生き延びることはできなっただろうと思われます。

実験結果のまとめ

バッタでの実験をまとめると以下のことが解りました。

高炭水化物の餌を与えられて飼育されたバッタは
体が要求する量のタンパク質を摂取するために延々と食べ続け、その結果、太ってしまい、発達が遅れてしまった。

一方、低炭水化物の餌で飼育されたバッタはタンパク質への欲求が早い段階で満たされたため、炭水化物の摂取が少なかった。その結果としてエネルギー不足に陥ってしまいました。

このバッタ実験で
与えられた食餌の栄養バランスが偏っている場合の、食物摂取の主導権をめぐる『タンパク質』と『炭水化物』の争いを動物で初めて明らかになりました。

最終的な勝者はタンパク質だったのです。

ショウジョウバエ

上記までの実験で色々と興味深いこともわかったが、またひとつ謎が増えてしまいました。
それは、何故タンパク質摂取ターゲットに上限があるのか?ということ。

タンパク質摂取ターゲットを達成してしまうと、ピタリと食事をやめてしまう動物たち。
生きるための、せっかくのカロリー摂取のチャンスを棒に振ってしまうことになるのに。

そこで、研究員たちはバッタで行ったのと同じような実験をショウジョウバエで行うことにしました。
ヒトの病気を引き起こす遺伝子の3/4がショウジョウバエにもある。
さらに平均寿命も短いため誕生から死までの実験をたった2ヶ月で完了できる利点もある。

実験用の食餌はタンパク質と炭水化物のふたつに絞り、これらの比率を変えた28種類の食餌でおこなった。

以下は実験結果から明らかになった事の一部です

カロリーと寿命との因果関係

このショウジョウバエと人口食餌を用いた実験のデータのグラフが何を示していたか・・・
それは

寿命は摂取カロリーとは全く何の関係もなく、タンパク質と炭水化物の摂取比率と強い関係を示していました。

高タンパク質のハエがもっとも短命だった

餌のタンパク質比率が高まるにつれハエの寿命が徐々に短くなり、
高タンパク質/低炭水化物食で最も早く死んだ

一方、繁殖についてはどうだったのだろうか?
産卵数が最も多かったのは、ハエが最も寿命を延ばしたであろう比率よりも高い比率でタンパク質を摂取した時でした。

タンパク質と炭水化物比が1:16のときが最も寿命が長く1:4のときが最も産卵数が多かった。
しかし、繁殖に関してもタンパク質の過剰摂取の代償はあったのです。
タンパク質と炭水化物比が1:4を超えると産卵数は減少したのです。

タンパク質に関しての結果
  • 少量のタンパク質を摂取すれば、長生きするが子孫を多く残せない。
  • タンパク質の摂取を少し増やせば子孫は増えるが、それほど長生きできない。
  • さらにタンパク質の摂取量を増やせば寿命も延びず子孫も増えない。

彼らの研究結果は
寿命と繁殖がトレードオフの関係にあることを示していました。

それまで考えられてきたように、寿命と繁殖が一定量のエネルギーと資源をめぐって競いあうのでもなく、また繁殖そのものが寿命を短くするような損傷を引き起こすのでもなかった。
繁殖と寿命では、栄養上の要件が異なるのだ。
子孫を多く残すためにはある食事を選び、死を遅らせるためには別の食事を選ぶ必要がある。
同じ食事で両方の成果を達成することはできない。

引用:新版・科学者たちが語る食欲 食欲人 EAT LIKE THE ANIMALS

日本ではは少子高齢化の進行がとどまること知りません。
その一方、言い方を変えれば長寿大国という一面もあります。
このことは食事と栄養と、なにか関係があるのかもしれませんね??

生物は長寿より繁殖を選ぶ

ハエは食べるものを自由に組み合わせることができる場合、どちらを選択するだろう?

別の実験でハエに、長寿(高炭水化物食)か繁殖(高タンパク質食)か選ばせた
僕らが選ぶであろう選択肢の反対をハエは選択した。

ハエは最長寿命ではなく、最多産卵数を支えるタンパク質と炭水化物の組み合わせを選んだのです。

これは、人間で言えば15人の子を産んで40歳で死ぬことに相当するんだそうです。

マウス

ショウジョウバエの老化に関する論文が2008年に発表されると大きな議論を巻き起こしました。
カロリー制限を研究する仲間からは「ハエは哺乳類でも、ましてや人間でもない」と反論されてしまいました。

そこで彼らは覚悟を決めました。
ショウジョウバエと同様の実験を、複雑な種、もうすこし人間に近い種
ヒトにかなり近い動物、マウスでの大規模な実験を実施することになります。

6トンもの餌と5年という月日

平均寿命が2ヶ月のショウジョウバエにたいして約2年生きるマウスの実験は必要な餌も時間も膨大でした。

数百匹のマウスと、タンパク質、炭水化物、脂肪、食物繊維の異なる比率の餌を25種を用意。
マウスは生涯25種類のうちのひとつだけで食餌で飼育し、栄養バランスが及ぼした結果を調べました。

ショウジョウバエの実験と同様に低タンパク質/高炭水化物食を食べ続けたマウスが最も長生きし、
マウスの平均寿命の2倍の4年以上も生きました。

さらに興味深いことに
低タンパク質が最長寿命を促進するには、高炭水化物と組み合わさる必要があるとわかりました。
人間で言えば、肉や魚、卵を減らしながら、低カロリーの野菜や果物などの健康的な炭水化物を増やす事に当たります。

また、低タンク質/高脂肪食は長寿のメリットをもたらさないことも明らかになりました。
人間で言えば、肉や魚、卵、炭水化物を減らしながら、バターや植物油、揚げ物などの脂肪分の多い食品を増やすことに当たります。

そして、やはりハエと同様に
もっとも短命だったのは高タンパク質/低炭水化物食で飼育されたマウスでした。

繁殖についてはどうだったのかというと、ここではタンパク質食が有利でした。
オスのマウスが大きな精巣を発達させ、メスのマウスが子宮を発達させるには高タンパク質食が必要でした。

要するに
長寿と、高い繁殖能力には、まったく異なる食餌が必要だったのである。
このことはショウジョウバエを使った実験と同じ結果でした。

栄養と寿命

マウスなど、色々な種の動物をつかった実験により
栄養素が寿命に及ぼす影響の様々なことがわかりました。

老化は食事で調節できる?

食餌を利用して、
老化の基本的な生物学的プロセスを強めたり弱めたりできる可能性があるということです。

断食が長生きに効く?

ヒトやマウス、ハエなどの生理的機構の中心にふたつの経路がある。
「長寿経路」「成長・繁殖経路」です。
このふたつは対立関係にあり、どちらかが機能していているときは、もう片方は機能しない。

つまり、わかりやすく言うと
食料と栄養が不足すると長寿経路が作動し、成長・繁殖経路は停止する
細胞とDNAの修復・維持システムが活性化して、いつの日か世界が変化して食料が豊富になり、
繁殖という進化上の目的を果たせるようになるまでの間、健康を維持するよう働くのだそうです。

逆に、
食料が豊富で充分なタンパク質が得られるときは長寿経路は停止し、成長・繁殖経路が作動する

ハエとマウスの実験から
カロリーの摂取量を減らす事が寿命を延ばすわけではないことが判明したのです。

あくまでもマウスの実験に関して言えば
「炭水化物に対するタンパク質の比率を下げる」こと、もしくは「断食」、あるいは「これらの組み合わせ」によって長寿経路を作動させることができるという事なんです。

長寿と引き換えに太る?

実験において、低タンパク質/高炭水化物の食餌で生涯にわたり飼育されたマウスは、
最も寿命が長く、老化と老後の健康状態も最も良好でした。

健康で長生きしたい人にとっては、大変喜ばしい発見なんですが
ひとつ難点がありました。
低タンパク質/高炭水化物の食餌で飼育されたマウスは、太っていました。

この結果、肥満は健康に悪いとは断言できない感じになってきちゃいました。

炭水化物以上に脂肪は身体に悪い

低タンパク質/高炭水化物食で飼育された長寿で健康的な太ったマウスと
低タンパク質/高脂肪食で飼育されて同じくらい太ったマウスとを比較してみると
決定的な違いがありました。

後者のグループのマウスの集団は、寿命が短いうえにかなり不健康だったんです。
つまり脂肪に対する炭水化物の比率のを変えるだけで、
比較的良性の肥満か、不健康な肥満を作り出せるということらしい。

なんとなくの感覚のうえではわかってはいましたが
炭水化物の摂りすぎより、脂肪の摂りすぎの方が身体に悪いってことですね。

食欲と栄養との関係性と影響力

マウスの実験を通して、餌を簡単に操作するだけで、様々な結果を引きこせることが解りました。
三大栄養素の比率で生態はコントロールが可能だということも。

まるでダイヤルをひねるように、これを少し増やしあれを少し減らすだけで、
肥満を起こすことも止めることも、
筋肉を増やし体脂肪を減らすことも、
がんを予防することも促進することも、
老化を遅らせることも速めることも、
繁殖を促進することも抑制することも、
腸内微生物叢を変化させることも、
免疫系を起動させることもできるのだ。

引用:新版・科学者たちが語る食欲 食欲人 EAT LIKE THE ANIMALS

人生100年時代と言われはじめてかたしばらく経ちますが、生物学的にはヒトの寿命は約50歳と言われています。
平均寿命を引き延ばしているのは医療や衛生面の恩恵に寄るところがかなり大きいですね。
最新の技術や、研究や実験で判明した新たな知見などが僕ら人類を豊かにしている面もあると思います。

ですが、野生の動物とちがい僕ら人類の食べているものは「健康・長寿」や「成長・繁殖」にとって好影響なものばかりではないようです。
その話は次の記事でご紹介したいと思います。
次の記事ではいよいよ僕ら人間の「食欲と肥満」と「加工食品」との関係をご紹介したいと思います。

もっと詳しく知りたいかたは、こちらでどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました